中谷宇吉郎〔物理学者。当时上野在住〕
流言蜚語の培養層を、無智な百姓女や労働者のような人々の間だけに求めるのは、大変な間違いである。関東大震災の時にも、今度と同じような経験をしたことがある。あの時にも不逞鮮人事件という不幸な流言があった。上野で焼け出された私たちの一家は、本郷の友人の家へ逃げた。大火が漸くおさまっても流言は絶えない。3日目かの朝、駒込の肴町の坂上へ出て見ると、道路は不安気な顔付をした人で一杯である。その間を警視庁の騎馬巡査が一人、人々を左右に散らしながら、遠くの坂下から馳け上って来た。そして坂上でちょっと馬を止めて
「唯今六郷川〔六郷橋付近の多摩川下流部〕を挟んで彼我交戦中であるが、何時あの線が破れるかもしれないから、皆さんその準備を願います」と大声で怒鳴ってまた馳けて行った。もう20年以上も前のことであるが、あの時の状景は今でもありありと思い浮うかべることが出来る。勿論全く根も葉もない流言であった。そんな馬鹿なはずはないと思われることは、どんな確からしい筋からの話でも、流言蜚語と思って先ず間違いはない。そういう場合に「そんな馬鹿なことがあるものか」と言い切る人がないことが、一番情ないことなのである。
(「流言蜚語」「読売報知」1945年!「中谷宇吉郎随筆集」岩波文庫、1988年)
 

나카야 우키치로(中谷宇吉郎)[물리학자. 당시 우에노 거주]
유언비어를 퍼뜨리는 자들(培養層)을 무식한 백성・여자,노동자 같은 사람들로만 간주하는 것은 대단한 잘못된 일이다. 간토 대지진 때도 이번과 같은 경험을 한 적이 있다. 그때에도 불령 선인 사건이라는 불행한 유언비어가 있었다. 우에노(上野)에서 화재를 당한 우리 가족은 혼고(本鄕)의 친구 집으로 도망갔다. 큰 불이 마침내 가라앉아도 유언비어는 끊이지 않는다.사흘째 되는 날 아침, 고마고메 사카나쵸(肴町)의 언덕 위에 나와 보니, 도로가에는 불안한 표정을 한 사람들로 가득 차 있다.그 사이를 경시청 기마순경 한 명이 사람들을 좌우로 가르며 멀리 언덕 아래에서 달려왔다. 그리고 언덕 위에서 잠깐 말(馬)을 멈추고는“지금 로쿠고가와(六郷川)[로쿠고바시 부근 다마가와 하류부(六郷橋付近の多摩川下流部)]을 사이에 두고 적과 교전중인데, 언제 저 선이 돌파될지 모르니까 다들 준비해 주세요”라고 큰 소리로 외치며 다시 달려갔다. 벌써 20여 년 전의 일이지만 그때의 정경은 지금도 생생하다. 물론 전혀 근거 없는 유언비어였다
.그런 바보같은 일이 있을 수 없다고 생각하는 것은, 믿을만한 소식통이라 해도, 그것은 유언비어라고 생각하는 것이 맞다. 그런 경우에 "그런 바보 같은 일이 어디 있겠느냐"고 단언하는 사람이 없는 것이 가장 한심한 일이다.
('유언비어', '요미우리 호치(読売報知)' 1945년! '나카야 우키치로 수필집' 이와나미 문고, 1988년)